元祖? 少女映画『お茶漬けの味』その1

世界が認める日本映画の巨匠、小津安二郎
『お茶漬けの味』は1952年の作品だ。
僕はこの映画が好きで何度も何度も見ているのだが、最近見ていないので記憶を頼りにこの記事を書く。だから間違いがあるかもしれないと先に記しておく。

この映画は個人的にだが、少女映画だと思う。
実際には少女は登場しない。登場する女性達は役柄的に既婚者がほとんどである。
津島恵子演ずる唯一の少女らしい登場人物も、「満で21、数え年で23」歳だからもう少女とはいえないかもしれない(リアル年齢はたしか27歳)。ではなぜこの映画が少女映画なのかといえば、それは小津安二郎の演出の仕方が原因だとしかいえない。小津安二郎映画の女性の登場人物は、おばあさんでも少女性を宿しているように感じてしまうのだ(たまにシリアスな映画もあるので全部ではない)。
七人の侍』で泥臭い演技をしていている津島恵子と比べてみてほしい。ジャンルが全然ちがうので比べようも無いが、同じ時期に二人の巨匠の作品でどう違うか、とても興味深い。

とにかく小津安二郎は鬼の演出で有名である。ある作品では、おばさんが部屋の中でくるっと体勢を変えて別の場所に行くシーンだけで何度も撮り直しをする。小津作品共通で「ちょいと(“ちょっと”とは絶対言わない)」というセリフが何度となく出てくるが、それも何度も撮り直す。そしてそれらのシーンはとてもかわいらしいのである。ほとんど「萌え」を先取りしていたとしか思えない。直接映画の内容と関係が無い部分にものすごいこだわりを見せるのである。


と、そういった具合に小津安二郎映画はおもしろい(意味不明)。
さて『お茶漬けの味』であるが、この映画は小津作品の中で飛びぬけて少女映画として萌えるのである。映画としての評価は小津作品の中では高くない。

ではどのあたりが良いのか、それは次回へつづく。